古物の取引をする際には古物営業法に則って、本人確認書類の提示が必要です。その際、取引には対面と非対面の2種類があり、保管が必要な本人確認書類が異なります。もし、保管義務を知らずに取引をしていると罰則を受けてしまう場合もあるため、しっかりとルールを知っておかなければなりません。
買取をするだけではだめなの?
対面と非対面で何の書類を保管すればいいのかなんて知らないよ…
保管する書類の違いはそんなに難しいことじゃないのよ
順を追って説明していくわね
当記事では、古物の対面取引と非対面取引での保管が必要な本人確認書類の違いについて解説しています。また、本人確認書類の方法や本人確認を怠るとどういったペナルティがあるのかについてもまとめました。古物取引をするなら、ぜひ最後まで当記事をお読みください。
対面・非対面取引で保管が必要な本人確認書類の違いを解説
対面・非対面取引で保管が必要な本人確認書類の違いは下記の通りです。
- 違い①:対面取引は本人確認書類の名称と番号を控えるだけ
- 違い②:非対面取引は送付してもらった全ての書類を保管する必要がある
んん…?
対面取引の方が簡単な気がするけど、どういう理由で違いがあるのかわからない…
これだけみても分かりにくいわよね
どうして対面と非対面で保管する書類が変わるのか説明していくわよ
違い①:対面取引は本人確認書類の名称と番号を控えるだけ
対面取引は本人を前にして本人確認を行っているため、本人確認書類の名称と番号を控えるだけで問題ありません。控えた名称と番号は古物台帳に記載が必須です。
例としては、運転免許証を本人確認書類として提出された場合は下記2点を控えておきましょう。
- 本人確認書類が運転免許証であること
- 運転免許証の番号
この際、古物台帳は手書きでも、パソコンでデータとして保存していても、どちらでも大丈夫です。ただし、古物台帳はすぐに警察に見せられるようにしておきましょう。
対面取引の場合は、本人確認書類の種類とその番号を控えておくだけで十分と覚えておきましょう。
なるほど!
確かに本人を目の前にして確認してますもんね
あとは古物台帳ってものに記録する必要があるからなんですね!
そう
古物の取引は例外を除いて記録を残す必要があると古物営業法で定められているのよ
じゃあ、なんでも種類と番号を記録しておけばいいんですね!
簡単!!
そういうわけにもいかないの
対面取引に限った話だから、非対面取引だと保管する書類が少し変わってくるわ
違い②:非対面取引は送付してもらった全ての書類を保管する必要がある
一方、非対面取引においては送付してもらった全ての書類を保管しておく必要があります。これは、非対面取引だと本当に本人からの申込なのかが確実ではない可能性があるからです。画像で運転免許証や顔写真を送信してもらったり、本人確認書類のコピーを郵送してもらったりした場合は、それら全てを保管しなければなりません。
非対面取引の場合は、データや書類を破棄しないように気をつけましょう。また、対面取引同様、古物台帳への記入も必須です。
対面取引よりルールが厳しいんですね…
非対面取引をするときは気をつけないと…
その通りよ
非対面取引はなりすましなどの危険性もあるから、気をつけることが多いの
対面取引で本人確認をする際の手順とは?
対面取引で本人確認をする手順を解説します。
下記3つの手順で対面取引は本人確認を進めます。
- 消えない筆記具で必要事項の記入
- 提示された本人確認書類と申し込み情報の一致を確認
- 本人確認書類の種類と番号を古物台帳に記入
手順①:消えない筆記具で必要事項の記入
買取申込を受ける際は、消えない筆記具で必要事項の記入をしてもらいましょう。タブレットなどで記入してもらう方法でも大丈夫です。
ただし、注意点として目の前で記入してもらう必要があります。消えない筆記具で書面に記入してもらうか、タブレットに必要事項の記入をしてもらいましょう。
時間がもったいないから、事前に必要事項を書いた紙を持っていけばいいのかな?
だめよ
”目の前で”記入してもらうことがポイントなの
なりすましのケースもあるから、絶対に目の前で記入してもらわないといけないわ
手順②:提示された本人確認書類と申し込み情報の一致を確認
提示された本人確認書類と申し込み情報が一致するかどうかを確認しましょう。
住所など細かい部分が本人確認書類と一致していることを確認しなければ、買取を進めることができません。
しっかりと記入内容と本人確認書類を見比べて相違がないことを確認する必要があります。
手順③:本人確認書類の種類と番号を古物台帳に記入
本人確認書類の種類と番号を古物台帳に記入しましょう。
本人確認書類の提出と内容の一致だけでは古物営業法において不十分です。古物台帳に記入する必要があるため、本人確認書類の種類と番号を控えておきましょう。
ただし、仕入れ値の総額が1万円未満の場合は古物台帳へ記入の必要はありません。
なんでも1万円未満なら古物台帳に記入しなくていいのか!
例外があるわ
ゲームソフトや書籍などは1万円未満でも古物台帳に記入する必要があるの
1万円未満でも記入義務のあるものは覚えておかないといけないわ
古物営業法上、1万円未満の例外商品以外の買取では本人確認も必要ありません。しかし、1万円未満であっても、買取申込者が18歳未満でないことを確認する必要があるため、犯罪防止の観点からもすべての取引において本人確認を行う方が賢明です。
非対面取引で本人確認をする主な方法3つ
非対面取引で本人確認をする主な方法を3つ紹介します。
対面取引同様、1万円未満の例外商品以外の買取では本人確認は不要です。しかし非対面の場合、買取申込者が18歳以上なのかの確認は本人確認書類と本人の顔写真などで見比べる等を行うしか「なりすまし」を防止する術がありません。
この観点から、犯罪防止のためにも非対面取引の場合は必ず本人確認を行う事をお勧めします。
非対面取引で本人確認をする方法は実際は多岐に渡りますが、現場で使用される方法は主に下記の3つです。
- 本人確認システムを利用して本人確認書類で確認
- 本人確認書類のコピーと宅配業者の集荷サービスで確認
- 本人限定受け取り郵便を利用して確認
3つも方法があるんだ…どれを使えば良いんだろう?
一番使いやすいものでいいわ
①の本人確認システムは導入できれば確認が楽になるから、導入を検討している古物商は多いのよ
方法①:本人確認システムを利用して本人確認書類で確認
まずメジャーな非対面取引の本人確認の方法として、本人確認システム(eKYC)を利用した方法をお伝えします。eKYCとは、オンラインで本人確認をするための仕組みです。主に、自身の画像と運転免許証などの画像をアップロードし、本人確認書類の人物と一致するかどうかを確認するものです。
システムの導入さえしてしまえば、最も簡単に非対面取引の本人確認ができる方法です。取引のオンライン化が進んでいる昨今、多くの古物商が導入を検討し利用が拡大しています。eKYCの導入については下記ページをご覧ください。
方法②:本人確認書類のコピーと宅配業者の集荷サービスで確認
eKYCの導入ができない場合は、本人確認書類のコピーと宅配業者(ヤマト運輸など)の集荷サービスで確認できます。
本人確認書類のコピーを送ってもらい、買取を行う際に集荷サービスを利用して本人から受け取るようにすれば十分です。この場合、売主が集荷依頼をすることはできず、買い手であるあなたが依頼する状況に限られます。
また、ヤマト運輸の本人確認サービスを例にすると、運賃に加えて本人確認サービスの利用料として300円の費用がかかります。
方法③:本人限定受け取り郵便を利用して確認
本人確認書類のコピーを送ってもらわず本人確認する方法も存在します。本人限定受取郵便を利用して確認するというものです。本人限定受取郵便でも「特定事項伝達型」というタイプでの確認方法を選びましょう。これ以外にも方法は2種類ありますが、どちらも本人確認情報を開示してもらえません。詳しくは本人限定受取(日本郵便ホームページ)(外部サイト)にてご確認ください。
氏名などの情報を送ってもらい、買い手(あなた)から本人限定受取郵便を依頼します。売り手は本人限定受取郵便を受け取る際に本人確認書類の提示が必要なので、このタイミングで本人確認が完了したことになります。さらに、「到達を確認」するための処置も必要です。本人限定郵便にて見積書や受付票等を送付し、それらを古物と一緒に返送してもらうなど、売り手が本当に本人限定郵便を受け取ったかの確認もしましょう。
費用感としては、基本料金の運賃に加えて一般書留の追加料金、本人限定受取の費用として210円が必要になります。
本人確認を行わなかった場合の罰則は?
本人確認を行わなかった場合の罰則はどうなるのか?気になるところでしょう。当記事で紹介した本人確認を行わなかった場合は下記のような罰則を受ける可能性があります。
- 罰則①:営業停止
- 罰則②:営業許可取り消し
- 罰則③:懲役・罰金
罰則なんてあるんですね…
本人確認を忘れることがそんなにいけないことなんですか?
法律で決められている大切なことよ
盗品などの売買をしてしまうと犯罪に加担してしまうことになるの
犯罪被害を最小限に抑えるためにも、本人確認は徹底しないといけないわ
罰則①:営業停止
最も軽い罰則としては、営業停止処分が挙げられます。営業停止になるのは、比較的軽い違反行為を行った場合です。重大な違反行為をしていた場合や、営業停止処分に従わなかった場合は次に説明する営業許可取り消し処分になる場合があります。
罰則②:営業許可取り消し
何度も軽い古物営業法違反を繰り返したり、重大な違反行為をしたりした場合は営業許可そのものを取り消しされるケースがあります。
古物の取引自体ができなくなる重い罰則です。本人確認を意図的に怠っていた、あえてしていなかったなどを長期間何度も繰り返していると営業許可取り消しになる場合もあるので、本人確認は徹底しましょう。
罰則③:懲役・罰金
違反行為が悪質だと判断された場合は懲役あるいは罰金、またはその両方が科される場合もあります。
3年以下の懲役、100万円以下の罰金を科される場合もあるため、古物営業法を順守した取引を徹底しましょう。特に悪質だと判断される違反行為は、無許可営業や名義貸しなどです。
本人確認を怠ってしまったからといっていきなり懲役・罰金になる可能性は低いのですが、悪質性がある場合は適用される場合もあります。ルールをよく知って、正しく対応しましょう。
まとめ
対面・非対面取引における保管が必要な本人確認書類の違いは下記の通りです。
- 違い①:対面取引は本人確認書類の名称と番号を控えるだけ
- 違い②:非対面取引は送付してもらった全ての書類を保管する必要がある
また、本人確認を怠ると、次のような罰則を受ける場合があります。
- 罰則①:営業停止
- 罰則②:営業許可取り消し
- 罰則③:懲役・罰金
本人確認書類の保管は法律で定められた大切な事柄じゃ
きちんと対面取引と非対面取引で保管する書類の違いを覚えておかんといかんのぉ
正しく古物営業法を理解し、違反行為のないように注意しながら本人確認を行いましょう。非対面取引を行う場合、eKYCを導入すると本人確認が非常に楽になります。下記もあわせてご覧ください。